KY1893のただの日記

この世をもっと知る

子どものお年玉

 子どものお年玉「全額貯金」させる親が見落としている将来のツケ

 子どもにとって新年のお楽しみと言えばお年玉。しかし、子どものころに親に"全額没収"されてガッカリした経験がある人も少なくないだろう。

 おもちゃメーカー大手のバンダイが行った調査によると、2017年に小中学生がもらったお年玉の平均額は25711円(小学生22,502円、中学生32,130円)、もらった相手は約5人だった。そして、使いみちはというと「貯金」が圧倒的な1位(39.2%)を占め、堅実な様子がわかる。ちなみに2位は「お菓子やジュースなどの飲食物」(29.1%)、3位は「ゲーム機・ゲームソフト」(28.3%)だった。

「これは子どもが貯金を選んでいるというより、親が強制的に貯金させているというのが現状でしょう。以前、小学校でアンケートを取ると、ほとんどの子が『お年玉は親に取られている』と不満を持っていました。それでは子どもがお金について学ぶ機会を親が奪っていて、実はとてももったいないことなんです」

 そう話すのは、ファイナンシャルプランナーで『PTAで大人気のお金教育メソッド 一生役立つ「お金のしつけ」』などの著書があるたけやきみこさんだ。給料が上がらない、就職した会社が倒産して失業するなど、経済的に不安定な時代を生きていくことになる世代だからこそ、将来お金に困らないよう、生きる力を養うための“お金教育”が必要だと指摘する。

 生涯でもらえるお年玉はどのぐらいなのか。単純化して計算してみよう。小学1年生から成人するまでお年玉がもらえる回数は14回程、一度に平均2万5千円とすると、すべて貯金しても35万円程だ。子どもにとっては大金だが、大人になるとわずか2カ月弱で稼いでしまえる額(大卒初任給は20万6千円、厚生労働省の2017年の調査)。これをケチっていると将来、子どもが大きな損をするかもしれないのだ。

「年収にもよりますが、ほとんどの家庭には月3~4万円、年間で50万円程の使途不明金があります。手取りの1割ぐらいの額が毎月、無意識に消えていくのです。子どものころからお金に触れて、計画的に貯めたり、予算立てができるようになっていれば、これらを貯められるようになります。年間50万円の貯金があれば、もしものときも安心ですし、毎年海外旅行にも行けるかもしれません。そして欲しいものを我慢したり、逆にお金を使う醍醐味を味わうこともでき、バイタリティーにもつながります」

たけやさんがオススメするのは、小学2、3年生になったら、お年玉をいくら貯金して、いくら使うかを親子で相談して決めるという方法だ。そして、使うお金は子どもに任せることが大事だという。「なんでこんなものを……」と止めたくなるほど無駄遣いをしたり、お金を落としてしまったり、小さな失敗を積み重ねることでお金の大切さや正しい金銭感覚が身につくのだ。

 また、全額を貯金する場合も、子ども名義の銀行口座を一緒に作りに行き、毎年記帳して貯金額を見せることで、子どもも納得しお金を管理する意識が芽生えるという。そして小学3、4年生になったら、自分の貯金から少し大きな買い物をしてみることを勧める。

 たけやさん自身も、娘が小学4年生のころ「自転車を自分で買ってみない? そのかわり、自分の好きなものを選んでいいから」と提案。最初は渋々受け入れた娘だったが、自分で自転車屋に行ってカタログを集め、タイプや金額をリサーチ。ギアを何段にするか、自動点灯のライトを付けるかなど細かなオプションと予算を勘案して2万7千円の自転車をゲットしたという。自分のお金で買う経験をすることで、キャラクター使用料やお店側の在庫数を含めたものの値段設定、新品と中古のメリット・デメリットなど、ものを買うときの目利きができるようになっていく。そして親に買ってもらったものよりも大事に使うようにもなるのだという。

しかし、たけやさんが驚いたのは、娘が資金調達までしたことだった。

「ある日、娘はカタログを持って祖父母の家に行き、こんな自転車が欲しくて、自分で買おうと思うから協力してほしいとプレゼンしたんです。交渉の末、1万円の軍資金を手にしました。自分の味方やスポンサーを探すのは、社会に出ても活かせる能力です。それを見ていた弟も小学5年のときに同じように自転車を買うことになり、姉の手法を真似しましたが、息子はうまくプレゼンできず軍資金をもらうことができませんでした。失敗も大事な経験です。お金の使い方には性格が出るもので、姉は着実に貯めて欲しいものを手にしますが、弟はお小遣い当日に使い切ってしまうタイプ。それがわかれば将来の仕事を考えるヒントも見えてくるのではと思います」
 お小遣い制をいつから、いくらから導入するかと悩む親の声をよく耳にするという。それならお年玉の使い道を一緒に考えてみるのも手かもしれない。

「親だって、お金のことは学校で教えてもらうこともなく、バイトや仕事をするようになって初めて自己流で管理するようになり、後回しにしてきたという人が大半だと思います。家計簿も付けていないのに子どもに教える自信がない、という不安もよく聞きます。それならお金の話をタブーにせず、親子で一緒に考えて、勉強してみてはどうでしょうか」

 将来のためにお金を残すのか、経験を買うのか。お年玉は親子で試行錯誤するにも良いチャンスなのだ。